p1 「障害者差別解消法社会保険労務士の業務を行う事業者向けガイドライン〜社会保険労務士の業務を行う事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針〜」の改正案に関する意見募集の結果について 令和6年3月29日 厚生労働省 労働基準局監督課 「障害者差別解消法社会保険労務士の業務を行う事業者向けガイドライン〜社会保険労務士の業務を行う事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針〜」の改正案について、令和6年2月23日(金)から同年3月23日(土)まで御意見を募集したところ、計45件の御意見をいただきました。 お寄せいただいた御意見の要旨とそれに対する考え方について、以下のとおり取りまとめましたので、公表いたします。 取りまとめの都合上、いただいた御意見は、適宜要約しております。また、パブリックコメントの対象となる事項についてのみ考え方を示させていただきます。 皆様の御協力に深く御礼申し上げるとともに、今後とも厚生労働行政の推進に御協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 なお、上記のとおり計45件の御意見をいただいたところですが、いただいたご意見の中には同内容又は類似のご意見も含まれること、令和6年4月1日からの円滑な施行に向け速やかに本ガイドラインを改正する必要があること等を踏まえ、本日3月29日付けで本ガイドラインを改正することといたしました。 p2〜4 案に対する御意見の要旨 御意見に対する厚生労働省の考え方 No. 「第1 趣旨」について 1 案に対する御意見の要旨 【(1)障害者差別解消法制定の背景及び経過】 「権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国にすべての適当な措置を求めています。」の「すべて」は「全て」の方がよい。 御意見に対する厚生労働省の考え方 御意見のとおり修正しました。 No. 「第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例」について 2 案に対する御意見の要旨 【(2)正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例、(5)合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例】 (意見の趣旨) @本改正案に新設されている「(2)正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」は全て削除すべきである。 A「(5)合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例」を挙げる場合は、拡大解釈されないように十分注意した上で慎重に行うべきである。 (意見の理由) @対応指針においては、正当化事由の具体例を示すべきでない。なぜなら、差別的取扱いの事例は合理的配慮の提供により、区別、排除又は制限等を回避でき、合理的配慮の不提供の問題に集約される場合がほとんどであり、正当化事由の適切な具体例が見当たらないこと、また、正当化事由に当たるか否かは事案ごとに異なり、その多様性が大きいにもかかわらず、正当化事由に当たる具体例を挙げてしまうと、そのような場合は一律に正当化事由に当たるとの誤解や拡大解釈を招き、障がいのある人の権利保障が後退しかねないからである。  詳解するに、「正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」の一つ目として本改正案に示されている、「車椅子の利用者が畳敷きの個室の利用を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと」という例は、「敷物を敷く」ことが差別的取扱いに当たらないと整理するのではなく、「敷物を敷く」ことを一例とする合理的配慮を提供することにより障害者も個室を利用することができる例として挙げるのが適切であり、「正当な理由がある」例として挙げるべきではない。  二つ目の、「手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認すること」という例は、本人の意向確認と合理的配慮の提供の必要性という異なる問題が混在しており、読み手に問題の所在を混乱させる恐れがある。同行者が代筆しようとした際に本人の手続の意思等を確認することは、本人の意思確認であり、そもそも差別的取扱いが問題となる場面ではない。また、「プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況」を確認することについては、「障害の状況等を確認する」ことが差別的取扱いに当たらないと整理するのではなく、「障害の状況等を確認」し合理的配慮を提供することが適当な例として挙げるのが適切であり、「正当な理由がある」例として列挙するのは不適切である。  以上のとおり、本改正案で挙げられている「不当な差別的取扱いに該当しない」と考えられる事例は、いずれも提示事例として不適切である。 A「合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例」を挙げる場合は、拡大解釈されないよう十分注意した上で慎重に行うべきである。  この点、本改正案において「合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例」として挙げられている「事業者において、事業の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断ること」は、「事業の一環として行ってない業務」の内容が不明確であり、そのため、本来、合理的配慮がなされるべきであるにもかかわらず、「事業の一環として行っていない業務」であるなどとして合理的配慮が提供されない事態を招きかねない表現である。誤解や拡大解釈につながる危険性が極めて高く、不適切であって、例として挙げるべきではない。  さらに、合理的配慮の提供義務に反しない例を挙げる場合は、このように影響が大きい対応指針に記載するのではなく、より具体的な内容を記載することで、事例を十分精査でき、判断要素や判断過程を書き込むことのできるマニュアル等に記載するべきである。 御意見に対する厚生労働省の考え方 御指摘の例示は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定、令和5年3月14日変更。以下「基本方針」という。)に基づき記載したものであるため、いずれも原案のとおりといたします。 なお、本ガイドラインに掲載されている事案はあくまでも例示であり、個別の事案ごとに判断することが必要である旨記載しています。 p5 No. 化学物質過敏症等に関する御意見について 3 案に対する御意見の要旨 化学物質過敏症患者が合理的配慮の対象となることを、ガイドラインに盛り込んでほしい。 御意見に対する厚生労働省の考え方 対象となる障害者の定義については、障害者基本法をはじめ、障害者差別解消法や基本方針に基づき記載しているため、原案のとおりとさせていただきます。 なお、化学物質過敏症についても、それを原因とする心身の機能の障害が生じており、かつ、当該障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあると認められる場合は、障害者差別解消法で定める障害者の対象になり得ると考えられます。 4 案に対する御意見の要旨 障害者差別解消法の対象となり得る、化学物質過敏症患者等への合理的配慮等に関する対応例を記載してほしい。 また、化学物質過敏症患者や香害で具合が悪くなる障害を持った人に合理的配慮をするよう義務付けてほしい。 具体的には次に掲げる事項を掲載・配慮していただきたい。 ・香料等を含んだ洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、消毒液などを控え、香料や除菌・抗菌成分を空気中に散布しないこと ・化学物質過敏症を含む環境過敏症への対応例 ・事務所、トイレ等の空間のフレグランスフリー、ケミカルフリー化等の環境整備を義務付けること ・社会保険労務士及びスタッフの制服、設備、備品全てに無香料かつ安全性の高いものを使用させること ・書類等への移香の防止を徹底させること ・事務所に消費者庁等で作成した香害啓発ポスターやチラシを掲示する等の周知を行わせること ・香害への理解を深めるため、事業者に研修等を受講させること 御意見に対する厚生労働省の考え方 社会保険労務士法において、開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならないと規定されており、これは化学物質過敏症等のある利用者への対応にも該当します。 このため、こうした「依頼に応ずる義務」の考え方について、社会保険労務士の業務を行う事業者に周知を図ることが適切と考えており、全国社会保険労務士会連合会において、上記規定は化学物質過敏症等のある利用者への対応にも該当するものであることについて、会員社会保険労務士全員に配布する会員誌(月刊)に掲載するなどにより、周知を図ってまいります。 なお、柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするという相談が消費生活センター等にあることを踏まえ、現在、消費者庁において厚生労働省を含む関係省庁と協力のもと啓発ポスターを作成し、周知啓発を図っております。 また、全国社会保険労務士会連合会において、香りへの配慮について、会員社会保険労務士全員に配布する会員誌(月刊)に掲載するなどにより、周知を図ってまいります。 p6 No. 脳脊髄液減少症に関する御意見について 5 案に対する御意見の要旨 脳脊髄液減少症への配慮を要望する。例えば、横になると頭痛や身体の痛み等の不調がやわらぐため、横になれるような配慮をお願いしたい。 御意見に対する厚生労働省の考え方 いただいた御意見は今後の参考とするとともに、全国社会保険労務士会連合会において、会員社会保険労務士全員に配布する会員誌(月刊)に掲載するなどにより、脳脊髄液減少症の方への配慮について周知を図ってまいります。 ※上記のほか、1件の今回の意見募集に関係ない御意見をいただきました。