p1 (別紙)法務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領(改定案)に関する意見募集の結果について 1 御意見の概要 本改定案に新設されている「正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」は全て削除すべきである。 御意見に対する考え方 御指摘の例示は基本方針に基づき記載したものであるため、いずれも原案のとおりとさせていただきます。なお、掲載されている例はあくまでも例示であり、個別の事案ごとに判断することが必要である旨記載しています。頂いた内容は、御意見として承り、今後の参考とさせていただきます。 2 御意見の概要 「合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例」を挙げる場合は、拡大解釈されないよう十分注意した上で慎重に行うべきである。 御意見に対する考え方 御指摘の例示は基本方針に基づき記載したものであるため、いずれも原案のとおりとさせていただきます。なお、掲載されている例はあくまでも例示であり、個別の事案ごとに判断することが必要である旨記載しています。頂いた内容は、御意見として承り、今後の参考とさせていただきます。 3 御意見の概要 意見の対象となる箇所:研修・啓発        意見:次の記述を加える。かつ、課題の多い現状を伝える事例を加える。        記述「包括的性教育の実施に取り組む。」        (事例)特別支援学校で「虹の輪」という言葉で、他人と距離をとるように指導された。        (事例)教員に服を脱ぐようにいわれ、教員の言うことなので従うしかなく、性行為の直前で他者に発見された。本人(障害のある女生徒)はおかしい、いやだと思ってはいたが、教員にいわれたことは従うように教えられてきたため、抵抗したり、助けを求める声をあげたりすることはできなかった。        (事例)妊娠を望んでいなかったが、交際相手が避妊をせず、性行為をした。そのことに対して「抵抗もせず、何も言わなかった」ため、同意しているとみなされ、妊娠を回避できなかった。        (事例)妊娠の自覚があったが、医療機関に行って受診することができず、周囲に相談することもできなかった。        (意見の理由と補足)        包括的性教育とは、「身体の話だけでなく、社会的な規範の是非、差別や暴力、ジェンダーの不平等をなくす方法、性を安全に楽しむ権利、リスクに直面した時にアクセスできる期間など、幅広いテーマを包括的に扱う(渡辺大輔 2022 T-Navi Edu Vol.12 光文書院から引用)」。        包括的性教育では、YESやNOを自分の気持ちや考えに基づいてはっきり表明することが大切だと教えられる。包括的性教育は誰にとっても重要だが日本の公教育は実施していない。妊娠中絶薬はようやく合法化に向かっているがアフターピルが手に入りにくいなど、女性の性と生殖に関する権利を守る体制が脆弱である。特に障害のある人は、いやなことでも我慢し、教員などには従うように教育される中で、自分の意見を表明することは間違いだと学習する。身体と性と生殖の具体的な知識、交際と性的関係の合意・産むかどうかは自分で決めてよいことを、わかりやすい言葉で繰り返し学ぶ機会が提供されていない。医療を含む相談や必要な手続きはアクセスしにくいもので、支援やサービスを得るための情報や子育て経験例などの紹介も乏しい。その結果、事例のように意見表明の権利や身体の自由の権利も侵害されることがあるが、それに気づくことも困難な状況におかれている。国連障害者権利委員会からも勧告を受けている。取り組むことの記述と、実行が必要である。 御意見に対する考え方 本対応要領は、法第7条に規定する事項に関して定められるものであることから、原案のとおりとさせていただきますが、頂いた御意見は今後の参考とさせていただきます。 p2 4 御意見の概要 意見の対象となる箇所:相談および研修・啓発        意見:次の記述と、事例のいずれか(課題を示す事例および好事例)を加える。        記述「女性からの相談は女性が受ける窓口態勢をとる。」「女性の接遇は女性がすることを基本とする。」「従事者の研修において、障害に加えて女性であることによる経験や課題について当事者から学ぶことを、必修プログラムに組み入れて実施し、業務や啓発に反映する。」        (事例)相談窓口に月経時のことについて詳しく話さなければならない場面があって、担当者は男性ばかりだったので話しづらかった。        (事例)女性に対する暴力の相談にたずさわる担当者の研修に、毎回、「障害のある女性と複合差別」を設けて、それぞれ障害の異なる複数の女性を講師として招き、全員で意見交換を行っている。        (事例)災害の防止や救援にかかわる担当者の必修研修に、災害時の障害のある女性ゆえの経験をテーマに、地元で課題に取り組んでいる障害のある女性を講師に招き、意見交換し、業務に反映させている。        (事例)ガイドヘルパー予約の際に「買い物のガイドだから男性のガイドヘルパーでもいいですか?」と対応されがち。女性として同性のガイドヘルパーを希望する。“排泄や入浴などの介助ではないから男性でもいいでしょう”という見方から転換して、合理的配慮として認識してほしい。        (意見の理由と補足)        改定障害者差別解消法基本方針には「各種啓発活動や研修等の実施に当たっては、障害のある女性は、障害があることに加えて女性であることにより合理的配慮の提供を申し出る場面等において機会が均等に得られなかったり、不当な差別的取扱いを受けやすかったりする場合があるといった意見があること(中略)についても理解を促す必要があることに留意する。」と定められた。今後の対応要領には、この一文をふまえた記述と事例が必要である。接遇できる人が男性のみという理由で、外出先で公共交通機関などでのガイドヘルプを拒否あるいは放棄される経験をした、障害のある女性が複数いる。もし対応できる女性がいない場合には、本人の希望と意見を聞いたうえで、その時にできうるかぎりの合理的配慮の提供がされることが必要である。相談においても、本人の希望と意見、緊急性重大性をふまえたうえで、場合によって女性が対応できる日時に相談を設定するなど、あらゆる可能性を念頭においていただきたい。 御意見に対する考え方 本対応要領の別紙「法務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項」(以下「別紙」といいます。)の「第5 合理的配慮の基本的考え方」において、障害者本人の意向を尊重しつつ、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされる必要があるとしています。また、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意することとしています。頂いた御意見については、今後の参考とさせていただきます。 p3 5 御意見の概要 意見の対象となる箇所:職業選択について意思決定の原則にかかわるところ        意見:次の記述を加える。かつ、下記の事例のいずれかを加える。        記述「障害別および性別によって特定の職業や職種に結びつける対応や進路を狭める対応をしない。本人の希望と適性を職業選択に活かせるように対応する。」        (事例)知的障害のある女性だからと、いつも手仕事が用意された。どんな仕事をしたいか、希望を聞かれたことがない。        (事例)「聴覚障害があるから、人と会話することがない、手を動かす仕事を」と、小学校低学年から推奨された。女性には縫製や理髪の職業コースがあった。本人の希望や適性とはかけはなれているために離職した人も多い。        (事例)「修士課程の次には博士課程に進み、大学で研究者として頑張りたい」と教員に伝えたところ、「あなたはろう者で女性だから大学への就職はできない。研究所にしか就職先はない」と言われた。        (意見の理由)        障害がある人に対しては、伝統的に「手に職を」という職業教育が行われてきて、本人の希望や適性以前に、あらかじめ特定の職業に誘導されることが多い。事例にあるとおり、そのなかで性別による対応の違い(障害があり女性であることによる複合差別)もある。そのため上記意見のような記述が必要である。 御意見に対する考え方 別紙の「第5 合理的配慮の基本的考え方」において、障害者本人の意向を尊重しつつ、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされる必要があるとしています。また、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意することとしています。頂いた御意見については、今後の参考とさせていただきます。 6 御意見の概要 意見の対象となる箇所:本人の意思決定の基本にかかわるところ        意見:次の記述と、差別が影響している事例・差別にあたる事例の、いずれかを加える        記述「あらゆる相談や接遇の最初に、本人の希望を聞きとり、それを尊重するルールをもつ。あらゆる偏見を排して、本人の話をよく聞くことから始める。」「障害福祉サービスの提供に当たっては、利用者の意向を踏まえ、本人の意思に反した異性介助が行われることがないよう取組を進める。」        (事例)入院先で日常的に異性介助が行われている。女性の入浴や排泄や夜勤時の介助は女性の従事者にして欲しいと希望を出しても、対応されなかった。男性の介助を受けることを了承しなければ介助をしないと言われた。        (事例)被害について、警察に話したが、目が見えないのに加害者についてわかるはずがない、知的障害があるから確かな話ではない、などの見方をされ、自分の話を信じてもらえなかったことがある。        (事例)障害があるので妊娠や出産や子育ては大変だと、繰り返し言われてきたので、無理なのかなと思ってきた。        (事例)障害がなかったころは積極的に産むように言われていた。障害をもつようになってから妊娠したときには中絶を勧められた。        (事例)車いすユーザーの立場で、子育てについて福祉の窓口に相談した。障害のない保護者と同様に子どもと一緒に公園等に行きたいという願いが理解されず、外出時の育児支援はいまだに得られていない。        (意見の理由と補足)        上記のような記述と事例を入れることが、相談することや本人が希望を出すこと自体が困難になっている状況の打開につながる。障害者権利条約の柱である「他の者との平等」に向けて進むことができる。第五次障害者基本計画に「障害福祉サービスの提供に当たっては、利用者の意向を踏まえ、本人の意思に反した異性介助が行われることがないよう取組を進める。」が新設された。あらゆる現場にかかわることなので、対応要領の本文にも加えられたい。現状は選択肢が多数あるわけでもなく、また行政サービスが生活に直結している。その中で相談する、自分の意見を表明するには、十分なわかりやすい情報の提供が意思決定の前提であり、話しやすい環境を整える必要がある。上記は障害のある人のなかでも複合的な差別を受けている女性において特に必要とされていることである。 御意見に対する考え方 別紙の「第5 合理的配慮の基本的考え方」において、障害者本人の意向を尊重しつつ、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされる必要があるとしています。また、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意することとしています。頂いた御意見については、今後の参考とさせていただきます。 p4 ※上記のほか、障害者施策全般に関わる御意見等をいただきました。